あの犬この猫そこの馬

自然を基調に、エソラゴトをのんびり考えていく

"クマ追い"の遺伝子を継いでいるはずの犬

家族に迎え入れた犬の中では三代目。

近所の「クマ追い犬」を親に持つ犬、コマ。

 

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「熊追い犬」とは実際に何をした犬なのかあまりわかっていないけれど、きっと名前の通り、里山から民家に近づいてきたクマなんかを追い払う役割をしていたんじゃないかと思う。

そんな仕事を務めてきた犬のもとに生まれたのが、コマらしい。

 

といっても、生まれながらにその能力があるというわけでもなく。

当時飼っていたシベ犬が亡くなり、そのあとに迎え入れた久々の仔犬だったので、末っ子のように可愛がられた。

そうして育った彼は、クマを追い払うなんてもってのほか、野生動物を見つけた途端に全速力でかけよろうとするので目が離せない。

 

家の近くの散歩道では、クマやシカ、狐、狸、キジなんかがよく現れる。

この犬はいつも鼻先のことに夢中になり、遠くの動物に気づくのはあまり早いとは言えない。なんだったら背の高い人間の方がいち早く見つけるぐらいである。

 

それでも、足元の草をひとしきり嗅ぎ終えて、ふと顔をあげ、風がうまく味方してくれると、彼は犬らしさを発揮する。

何かに感づいているときのコマは、急に凛々しく男前になるので、わかりやすい。

 

そうして視界の先に野生動物を見つけると、リードがつながっていることを忘れて、飛び出していくのだ。

その1秒後には、リードがピンと伸びて人間側がガクンとよろめきそうなほど、彼のバネ力は強い。

首輪と飼い主の手をつなぐヒモのせいで、自分が自由ではないことを知ると、コマは飼い主を支柱にして、コンパスのようにぐるぐると走りながら自らの興奮を訴える。もちろん、こちらは要望に答えることなどできないのだけど。

 

コマは、もしリードにつながっていなかったら、どうするつもりなのだろう。

追いかけるようにどこまでも走っていって、クマやキツネと友達にでもなるつもりなのだろうか。

あながち間違ってはいないかもしれない。

 

相手が嫌がるのも気にせず、相手がどんな大きさなのかさえ気にとめることなく、猫にも馬にも近づいていく犬なのだ。

馬が草を食べているのをみると、真似して足元の草をはみ始める。

消化されなかった干草のせいで、排便のとき苦労することになるとも知らずに。

猫の匂いがどうしても気になるらしく、毎回爪のでたパンチを食らうことになろうとも、こと嗅ぐことに関しては余念がない。

 

一度、リードが外れて、実際に走っていってしまったことがある。普段は呼び声に反応して戻ってくるが、そのときは100メートル先のキツネしか目に入っていなかった。

どこまでもどこまでも走っていってしまう後ろ姿を見つめながら、彼の執念に恐ろしさを感じた。

 

こんな存在が、家にいる猫と外にいる馬をつないでいる。どちらとも深い関わりを持っているのはこの犬だけだ。

 

コマにはたしかにクマ追い犬の血が流れている。

その原動力は、底の尽きない興味と、一緒に遊べるかもしれないという純粋な希望なのだ。

 

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