あの犬この猫そこの馬

自然を基調に、エソラゴトをのんびり考えていく

青い貝殻と海に生きる心

「これは全部ムール貝の殻」

この圧倒的な青さはなんだと何個か拾って見せたらそう教えられた。

たった一種類の貝殻が浜辺を覆い尽くしている。

きめ細かい砂浜も、こういうザラザラゴロゴロした濃い色の浜辺も、ひっくるめて海はいいものだ、と心から言えたらいいのに。

 

 

「住む場所は海の近くじゃないといけないから」

そう言っていた人の言葉が忘れられない。

仕事は直接海に関わっているわけではなさそうだった。その人の心の在りかが海に深く根を張っていて、内陸にこもるのは窒息と同義だと言わんばかりの強い言葉だった。

 

散歩に行くとき、近くの海岸までのルートを教えてくれた。お気に入りの場所だと言って連れて行ってくれた先はやはり海岸だった。

 「疲れたときは特にここに来たくなる」

磯の香りと波の音、すこし冷たい風を心から堪能しているように見えて、確かに綺麗なところだけど、そんなにも楽しめるものなのかと感心した。

その様子を見て、私の心は、特別、水際に根ざしているわけではないのだと気づく。

 

 

自分の人生に何が必要かわかっている人は、眩しいほどに活力に溢れて見える。

好きなものに打ち込んでそれを惜しみなく人に教えられるというのは、才能だと思うのだ。真似したくてもできるものではない。

うらやましい、と思う。

 

ムール貝の青は、優しい色だった。

波にもまれて削られて、すっかり丸みを帯びた彼らの抜け殻は、ともすれば石と見間違いそうだ。

青い地面を一枚だけ写真に収め、貝殻の何個かを持ち帰って来た。それだけだ。帰ってから、思い出すことはほとんどない。

 

青い貝殻は、決して私の何かを変えたわけではないけれど、それでも、そのときの記憶がどこかに蓄積されていることを願う。

 

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