あの犬この猫そこの馬

自然を基調に、エソラゴトをのんびり考えていく

空に泳ぐクジラ雲を眺めながら

空にクジラが現れた。

そんな話が小学校の教科書に載っていなかっただろうか。

確か、1年生の国語の教科書の、序盤か中盤あたりに。

 

あのお話を教室で音読してから、何年が経っただろう。

 

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あの頃から、時間も場所も遠く離れてしまった今、空にくじらぐもを見つける。

(背びれと胸びれが見当たらないので、どちらかというとシャケっぽいかもしれない)

 

どこを向いても青い空しか見えない快晴の中、この雲だけが低空飛行している。

そのとき、わたしは海の上にいた。

ほとんど波のない入り江で、それでもかすかな水の流れに揺れながら、目の前にクジラを見た。

もし空と海の間に陸がなくて、本当にひと続きのような空間だったら最高だったのにな、と惜しく思う。

 

 

くじらぐもを教科書で読んでいた頃。

あの頃は、ジャングルジムにたむろして、雲の形を当てるゲームをしていた。

そのうちの1人がカエルを手にジムのてっぺんまで登ったものだから、不運なカエルは、逃げようと少年の手のひらから飛び出して、意図せず大空に羽ばたいていった。

雨上がりのジャングルジムは、長靴との相性が悪くて、よく滑った。

あそこに浮かぶ雲は、クリームパンかウサギかで言い合いになった。

 

あのジャングルジムにいた子どもたちは、今、ずいぶんと違う道をたどっている。

数年前、わたしの通っていた小学校は廃校になったことを知った。

空はひと続きだというけれど、わたし以外の誰も、このクジラ雲が見える場所にいないことだけは自明だった。

 

ほんとにたまに、ごくたまに、あの閉鎖的な小学校の社会の中に戻りたいと思う。

大きな声で音読をしていた、あの教室に。